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ギリシャのワイン法(原産地呼称制度)について

本日はギリシャのワイン法(原産地呼称制度)についてまとめてみたいと思います。

WSET Level 3のテキストには非常にざっくりと、「他のEU諸国の法律に従っています〜」とか、「PDOとPGIに分類されます〜」、程度しか記載されておらず、私自身もちゃんと理解したいと思い、主には英語で探せる情報で調べてみました。

ポイント

非常に簡潔に言うならば、ポイントはWSETのテキストのように、以下の2点のようです。


①ギリシャのワイン法は他のEU諸国のワイン法に沿っている
②大きくはPDO(Protected Designation of Origin=保護原産地呼称)と
 PGI(Protected Geographical Indication=保護地理的表示)の2つに分類される

 ※実際には、上記2つ以外にもVarietal winesとGreek winesというテーブルワインのカテゴリーも存在 

ものすごくあっさりしているWSETのテキストの説明でしたが、ポイントを非常に簡潔にカバーしていたんだなぁと感じました‥‥!
それでは、早速PDO、PGIそれぞれについてもう少し詳細にまとめていきたいと思います。ちなみに、2023年10月現在、PDOの登録数は33、PGIの登録数は114となっています。

2021年のデータでは、ギリシャワインのうち9.5%がPDOワイン、23.5%がPGIワインだったようです。
(ちなみに当社が扱っているワインは全てPGIワインです♪)

ギリシャのPDO(Protected Designation of Origin=保護原産地呼称)

さて、いきなり悩ましい。。何が悩ましいかというと、ソース(下記の参考文献・ウェブサイト参照)によって書いてあることが様々なのです。。

まず、Wines of Greece(The National Interprofessional Organization of Vine and Wineが運営するウェブサイト)や多くの英語で読めるオンラインソースによると、PDOワインの中にはAOQS(優れた品質の原産地呼称)とAOC(原産地呼称)の小分類があるそうです。それぞれ現地ギリシャ語では、OPAP(オパプ)とOPE(オペ)と呼ばれるそう。試しに日本語でも調べて見るとWikipediaをはじめ多くのウェブサイトでAOQS(OPAP)やAOC(OPE)について説明がなされていました。

一方、今回のソースの中で最も権威があるKonstantinos Lazarakis MWの著書によると、現在、PDOの中の小分類(AOQSとAOC)は存在しないようです。2009年〜2010年にかけてEUで新しいワイン法が制定されたことに対応し、ギリシャのワイン法も改正され、AOQSとAOCは統合されPDO(保護原産地呼称)一本になったとのこと。ちなみにPDOは現地語ではPOP(ポップ)というそうです。

念のため、上記についてKonstantinos Lazarakis MWに連絡して質問してみたところ(優しいので結構早くお返事をくださいます!)、Wines of Greece等の説明は古い情報であり、やはり現在はPDO(POP)一本との回答を頂きました。ということで、以前AOQS(OPAP)とAOC(OPE)だったものが統合されて、今はPDO(POP)となっている、と覚えましょう!これ以降のPDOに関する内容は、Konstantinos Lazarakis MWの著書を参考にまとめます。

ブドウ栽培に関するPDO(POP)の要件には、ブドウの木の仕立て方(training system)、ブドウの木の密度(vine density)、剪定の仕方(pruning)、施肥(fertilization)や灌漑(irrigation)等様々な項目が含まれますが、これらの要件は時代遅れのものもあり、従わない項目があったとしてもPDOのステータスが剥奪されることはないようです。

ワインの醸造に関してもブドウ栽培のようにPDO(POP)の要件が色々と設定されていてもおかしくないのですが、実際には、①補糖(シャプタリザシオン:Chaptalization)が禁止されていること、②オーク樽での熟成期間に関する規定があること、③あるヴィンテージのワインの販売を開始することができるタイミングについて大まかな決まりがある程度で、細かい規定がないのが現状だそうです。
おおらかですね。笑
なお、PDOワインは、当該PDO地域で栽培されたブドウを100%使用し、ワインの醸造も当該PDOの地域内で実施する必要があります(RobolaとCephaloniaを除く)。

PDOワインは、熟成の期間によって、”reserve”と”grande reserve”という2つのラベル表示が可能です。各表示に関する要件は以下のとおり。加えて、白ワインについては、600リットル以下の樽で熟成させる必要があるという要件があります(赤ワインについては樽のサイズに関する要件はなし)。

白ワインreserve熟成期間1年、うち最低オーク樽で最低6ヶ月、瓶詰め後3ヶ月
grande reserve熟成期間2年、うち最低オーク樽で12ヶ月、瓶詰め後6ヶ月
赤ワインreserve熟成期間2年、うち最低オーク樽で12ヶ月、瓶詰め後6ヶ月
grande reserve熟成期間4年、うち最低オーク樽で18ヶ月、瓶詰め後18ヶ月
ギリシャのPDOワインの熟成に関するラベル表示

また、PDOワインのボトルの首の部分には、PDOワインの目印として赤い帯がつけられています。

ギリシャのPGI(Protected Geographical Indication=保護地理的表示)

次にギリシャのPGIについてまとめていきます。PGIのポイントは以下の3点です。ちなみに、PGIは現地語ではPGE(ピージーイー)です。

  • Local wineであり、テクニカルにはEU・ギリシャのワイン法におけるTable wineのサブカテゴリー
  • PDOよりもブドウ栽培や醸造に関する制限が少ない(醸造においては、当該PGI地域内で栽培されたブドウを最低80%使用する必要あり)
  • カバーする地域の範囲によって、PGI Regional Wine(より広い範囲)、PGI District Wines、PGI Area Wines(より狭い範囲)の3つのレベルが存在

ワインのラベル表示においては、PDOで認められる“reserve”や “grande reserve”の表記は使用不可ですが、下記に定められた期間熟成させたPDO以外のワインに対しては、”cava”という表記が可能となっています。

白ワインのcava熟成期間1年、うち最低オーク樽で6ヶ月、瓶詰め後6ヶ月
赤ワインのcava熟成期間3年、うち最低オーク樽で12ヶ月、瓶詰め後12ヶ月
ギリシャのPDO以外のワインの熟成に関するラベル表示

参考文献・ウェブサイト紹介

参考にしたのは下記の文献・ウェブサイトです。
①THE WINE OF GREECE, Konstantinos Lazarakis MW
MWが書いている本ですから、情報が正確かつ詳細で読み応えがある本です。

Amazonでは【アダルト】に分類されている本ですが、ギリシャのMaster of Wineの方が書いた本であり、(当然)内容は健全です。笑

②Wine of Greece https://winesofgreece.org/ (The National Interprofessional Organization of Vine and Wineが運営するサイトですが、上述のとおり、PDOに関する情報が古いようです)
③VINEPAIR “Your Guide to Greek PDOs and PGIs” https://vinepair.com/articles/your-guide-to-greek-pdos-and-pgis-infographic/

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